新着一覧

これまでの新着情報の一覧です

Quintessence 60周年に参加して(内容は主に歯科関係者向けです)

〜歯科界におけるQuintessence社の長年の貢献と歯科治療における予知性の向上とリスクの軽減について〜

写真左は世界的に著名なインプラント専門医Renoud先生) 

上浦庸司 (CIDクラブ)

平成21年1月22日から24日、ドイツにてQuintessence出版設立60周年記念講演会が開催された。日本からの約150名をはじめとして 世界各地から3000名以上の参加者がベルリン市郊外の1000室の客室を有するエストレルホテルに集結した。 私たちの所属するスタディクラブであるCIDクラブ(代表:勝山英明先生)からは13名が参加した。ベルリンはドイツ北部(北緯52度)に位置し、筆者(上浦)の住む小樽(北緯43度)と同じくらいの気候であったが、雪が少なく寒い感じがした。

1日目:午前中は、ストローマン社主催の講演会(Straumann Japan Expert Meeting)が開催され、勝山英明先生ならびにストローマン社のSandro Matter氏の講演があり、1)micro gap freeを具現化し審美部位に適した"ボーンレベルインプラント"の基礎的・臨床的な評価:動物実験・臨床調査よりインプラントネック部周囲の骨吸収が0.5mm以内であることがわかっており、審美部位の使用に適している、2)チタンとジルコニアの合金で強度が純チタンより50%も高い新素材の"Roxolid"、3)ストローマンインプラントと連携が図りやすく5軸タイプのCAD/CAMシステムの"etkon"などが紹介された。これらの製品については日本での認可が待ち遠しいところである。夕方からはQuintessence社主催のウェルカムパーティが開催され、Quintessence社Haase会長の歓迎の挨拶をはじめ、ベルリン市長Wowereit氏の挨拶、ミュンヘン大学Herrmann学長の講演、優雅なクラシックの演奏、地元のベルリン少年少女合唱団による合唱などがあり、Quintessence社がベルリンのみならずドイツの出版界においての幅広く貢献度をしてきたことを伺い知ることが出来た。

2, 3日目:
2日間の講演会は、1、審美とインプラント、2、ペリオ、3、エンド、4、補綴、5、外科、6、保存、7、矯正、8、歯科衛生士、9、歯科技工士 に分けられ "審美とインプラント"について大会場2つが使用され、演題の約1/3が割り当てられ、このトピックがここ数年の重要なテーマであることを再認識されられた。また、各演者は Quintessence社の著者から厳選された方々で 世界中から集まった豪華な布陣であった。

【インプラント】インプラントについて、各演者は前歯部位の審美性の獲得について"インプラントに隣接する歯間乳頭(様組織)の再生"、"硬・軟組織移植による対称的なカントゥアの獲得"、"ジルコニアをはじめとするセラミックアバットメントによる自然な歯肉の色調"などについて動画やアニメーションといったデジタルを駆使して短時間に多くの情報をわかりやすく説明してくれた。
インプラントにおける審美性の獲得に関して全体的に"即時埋入"、"フラップレス"、が有効であるという発表(Mankoo、 Calesini、 Paul、 Galasso先生ら)が多いように感じたが、ITIの次期会長のBuser氏をはじめ、2~3名の演者は"エキスパートでない術者"が行う即時埋入やフラップレスの危険性に対し警鐘を鳴らした。筆者を含め平均レベルの術者は華やかな成功例の陰に隠れた失敗例にも目を向け、1)臨床における予知性(predictability)の向上と2)リスクの軽減を最優先し、治療の標準偏差を小さくするための術前の詳細な分析や治療計画の立案について熟慮しなくてはならないと感じた。
この他のトピックでは1)日本の勝山英明先生、Burkhardt先生、Zuhr先生が予知性を向上させるために繊細な外科処置を可能にするマイクロスコープの活用およびマイクロサージェリーの重要性について講演し、2)Strub先生、Galasso先生らがガイデッドサージェリーによる即時荷重の有効性について言及し、これらが今後のインプラント治療に取り入れられてくるものと考えられる。

【歯周】
インプラントが最も重要なトピックであるのは確かであるが、1)インプラントと歯の保存についてたくさんの論文をもとに自身の症例を用いて講演されたJepsen、Heinz先生、2)各種の成長因子(GEM21,  PDGFなど)を用い歯の保存を試みる臨床報告をしたNevins先生、Wojtowicz先生、Schlegel先生もおり、臨床においては予知性の向上とリスク低減を考え、歯の保存を考慮にいれながら、インプラントを適応すべきであると感じた。

【歯科衛生士】
このセッションは英語の通訳がない(ドイツ語)セッションであったが、満席でたくさんの立ち見が出るほどであった。内容としては高齢者におけるインプラント治療のリスクなど衛生士が知っておくべき内容について聴衆は真剣に聴き入っていた。

まとめ:Quintessence社の60年間の活動は世界中の歯科の発展に多大な貢献を果たし、歯科界を常にリードし、また本国ドイツにおいては歯科界のみならず、一般社会でも高く評価されていることを伺い知れる素晴らしい講演会であったように感じた。今後もQuintessence社と歯科界がともに発展できることを期待したい。
またメイントピックのインプラント治療においては審美性獲得のための"フラップレス"、"即時埋入"については適応症や術者の経験・技量を考慮し、あくまでも予知性の向上とリスクの軽減を第一に考えて術式を選択する必要性があると感じた。これは米国と比較するとやや保守的で伝統を重んじる欧州的な考えであるのかもしれない。
また、今回の講演をおさめたDVDも販売される予定であるので上記で興味のある講演については購入・視聴していただければと臨床に役立つものと思われる。